3Dデザインのその先
●自社の手作業による靴型をCADデータ化してみた
CADの作り込みに長い期間が掛かってしまいました。実際の幾つか自社用の木型開発に使いながらバグを除いたり、応用範囲を広げるためロジックを直したり、モジュールを追加したりとぼちぼちと手を加えていてやっとコア部分の機能が揃ったところです。
靴型の分野で汎用性を意識して、組み立てたのでパラメータ数が膨大になり、スピードが遅くなってしまったのですが、整理していくに当たってはモジュール化し易く、組み直してもバグの発生が少なかったので、初期の難解さに比べると後が楽に編集できました。
したがってシステム構築の方針は正しかったと思っています。
新しい靴型モデルの制作の為、既存の靴型を3Dスキャンしたメッシュデータからパラメータと断面曲線を抽出し、サーフェスモデルを生成するモジュールを作成しました。
リバースエンジニアリングのツールとも言えますが、動画にアップしました。
今後の課題と所見
●今出来ること、分かった事。
予定のモジュールは一通り出来上がったが、今後も修正の必要性は生じるであろう。
当初、想定していた機能の範囲、操作性はどこまで実現できたかを振り返ってみた。
以前の記事に運用方法について書いていたがそれと対比した。
靴から同じつま先型をトレースする事は靴のスキャンデータがあれば容易であり、自社のモデルから変形する方が靴型と靴の製作時に必ず起こる形状差に迷わされることがないので、型取り材を使用する方法よりもまとめ易い。
ヒールの高さを変えることは可能だが、ボディーの断面形状を自分好みの変形ルールに載せるには、チューニング(いくつもの変形パラメータの組み合わせを調整)が必要。
しかしチューニングによって変形ルールが変わるという事が、他の靴型デザイナーの考えや好みに合わせられる柔軟性を持つことになった。
足囲の調整は、常にモデルの計測値を表示しながら行えるので、問題ない。
単純なY軸Z軸方向の拡大縮小よりも、計測値を見ながらいろいろな方法で編集したほうが足に合わせることが出来る。
デザイナーの知識技量はやはりこの様なところで必要になってくる。
当初評価の対象していた再現性や可逆性に関して、つまり変形を繰り返すことによって生成する曲面の誤差が拡散してしまう懸念については、作図上の整合性を確保するために、ロジックを精密に練り上げることによって誤差を小さくすることが出来たので、2回の繰り返しなら見た目気にならない程度であり心配には及ばなかった。
●これからチューニング
変形ルールは、多数のパラメータの組み合わせによって確立する。
自分のルールを確立するため、パラメータを少しずつ変えながら結果を確認するので時間がかかるが、確立すれば後々変更する必要はないはず、
チューニング作業はまだこれからで、時間がかかるのでじっくり進める予定。
●優秀なデータの収集
足の計測データを基にオーダー靴型を製作するには足と足に適した靴型との関係を解明しなければならない。
私は経験上ある程度、関係性を理解しているが十分とは言えない。またプログラム化することはこれからロジックを考察していかなければならない。
ビッグデータを取得し、AIを使って解析をすることによりマクロに関係性を解明できるという説には私は異論がある。
市販の大量の靴と製作に使われた靴型は、全体的にユーザーに充分満足されているものとは言えない。
だからこそ多くの靴業界関係者が靴型に取り組んでいるのだ。
不良なデータは大量にあってもあまり役に立たない。
本当にユーザを満足させた良質な足と靴型の関係データを収集することが重要と考える。