再現性と可逆性
再現性とは、繰り返し同様の作業を行った時に同じ結果が得られるという事、可逆性とは靴型について端的に言えば、例えばヒール高3cmのモデルを元に8cmに変形し、またそれを3cmに変形した場合、元のモデルと同じ形状に戻るかという事になります。
靴型を手作業で削っていたときは、人間の感覚で立体曲面を再現することは不可能です。一方靴型モデルを数値データ(stl形式などの)として保存し、NC工作機械で再現することは十分可能ではあります。
しかしここでは、単純に全く同じ形状を複製するという事ではなく、ヒール高の違う、つま先形状の違う靴型であっても、一定のルール上で作られ重要なパラメータが守られていることが再現性の意味であると考えます。
一定のルールとは製作者や、そのグループが決めるもので、世界標準や必然的に決まるものではありません。靴の機能性(履き良さ)や生産性の実績をもとに取決めるべきであり、「リバースエンジニアリング」という分野もここでは意味あるものになります。
具体的にはヒール高に対応する底面のアーチが一定で、底面自体、ヒールカーブ、肉付き(断面形状)なども同形でその変化がルールに沿っているという事になります。
つま先形状や靴のデザインのため、形を変えなければならない部分もあるので、その部分は除外した範囲での再現性となります。
再現性とは一定の作業で同じ結果を得る事ですが、可逆性とは双方向で再現できる、より強い再現性といえます。
3dCADにおいて、逆の手順をおこなえば逆方向の変形は容易に可能とも思えますが、しかし複雑な変形が必要な靴型においては難しい問題があります。
変形のもとになる人間の足では、ヒールアップすると足の裏では皮膚に皺がより、甲は皮膚が伸びるような変形をします。
CADでこのような変形をさせるのに、皺になる余剰データを取り除き、不足する部分を生成する工程が生じ、元の情報が失われ元通りには戻せないことも考えられます。
ただし問題点はその誤差がどの程度かという事であり、誤差を小さくし実用範囲に収めるように手順を工夫することが必要になります。
もともと、変形過程で形状を整えるため、手作業で制御点を移動させると、再現性は失われることになります。