靴のパーツ(部品)の呼び方(3)
甲部分の部品
外から見える部品について述べます。
甲部分は靴のパーツとしては甲革、アッパー(Upper)などと呼ばれます。工程管理上は製甲(上がり)ともいいます。
アッパーの部品は、靴の種類、デザインによって使われるものはまちまちですが、よく使われるものを挙げます。
甲部分は靴のパーツとしては甲革、アッパー(Upper)などと呼ばれます。工程管理上は製甲(上がり)ともいいます。
「甲革」はアッパー(甲革)の表素材の事を指す場合もあります。
アッパーの部品は、靴の種類、デザインによって使われるものはまちまちですが、よく使われるものを挙げます。
表革、裏革:外の見える方を表革、足に接する側を裏革といいます。使用する材料は革の種類の項で述べましたが、合成皮革、布など革でないものでも、パーツとしてこの言葉を使っています。
スベリ、滑り止め:裏革の一部ですが、婦人靴では踵の当たる部分は、革の床面や人工皮革の基布など別の素材を使う事が多く、こう呼ばれています。
起毛素材を使って、歩行の際、踵が滑って脱げることを防止するためのものです。
伸び止めテープ、折込み芯(テープ):パンプスなどの履き口は表革を折り返すなどの縁処理(折込み、袋縫い、テープとり、玉出し、等の手法があります)をしますが、内側に2〜5mm幅の伸びにくいテープを入れます。
革のみでは、歩行時に加わる強い力によって革が伸びたり切れてしまって、靴が長持ちしません。
縫い割テープ:表革をつなぎ合わせるために(踵のセンターや内腰など)、縫い割りという手法が多用されます。内側に縁をつまんだ状態に裏側を縫い合わせますが、つまむ幅つまり縫い代(しろ)は1〜1.5mmくらいで表に凹凸を出さず、糸も見えなくなります。(この縫い代の差は、布と革の扱いの大きな違いといえます。)この縫い割り部分の糸と革の補強のために10mm程度のはばのテープを裏に貼ります。またつまんだ部分の裏側へのデッパリを抑える働きもします。
糸:表革と裏革を履き口でとめたり、表の革同士をつなぎとめたりする場合、基本的にミシンで縫い留めます。接着剤は長期間使用してはがれる危険があるからです。基本として使われる靴用のミシンは上糸と下糸を使うロックステッチ式です。
ここまでは、革靴に基本的に使われるものですが、靴の種類、デザインによって使われるパーツは多数あります。
また、飾りに限れば服飾雑貨のものがいろいろ流用されています。
紐で甲を締めるタイプの靴では、布または革製の靴紐が使われます。紐の両端のほつれ留めはセルといわれています。
紐を通す穴は、革素材の場合(繊維が強いため)そのまま紐を通すこともありますが、穴の縁を保護するためリング状の金具で保護することがあります。
この金具を、ハトメ(鳩目)と呼びます。金属を表に見せたくないときは、裏革のみに取り付けるタイプもあり裏ハトメといいます。
金具の範疇では靴のベルト(ストラップ)の留め具は尾錠(美錠)といいます。ピン(止め棒)を通す穴の位置を変えベルトの長さを変える実用的なものは靴用の場合、6mm〜15mm位(通すベルトの幅で表す)が一般的です。それ以上大きな装飾目的のものはバックルと呼ぶケースが多いようです。材質は真鍮(しんちゅう)製のものとキャスト(製法)と呼ばれる亜鉛製が多く、亜鉛製は低コストで多く使われていますが、脆いのでぶつけたりすると割れてしまう事故が稀にあります。
履くためにベルトを外さなければならない場所に使われている場合(例えば甲ベルト)、取り外しの簡単なホック式のパーツを付けることが多いです。
カジュアル・スポーツタイプではストラップ留めには尾錠のいらないマジックテープ(ベルクロ)がよく使われます。
甲の深い靴では、ストラップなしで履くためにゴムを一部に使ってそのまま履けるようにデザインしたものもあります。
ブーツはファスナーが多く使われます。チャックやジッパーも同義語ですが、製造元のYKK《吉田工業》がファスナーの名称で販売したので一般的にこう呼ばれるようになりました。
靴用では、かなり負荷がかかるので用途として保証されているのは、ナイロンコイルの#5(コイルサイズ)規格となっています。
金具の固定方法にも少し触れておきます。
尾錠のように、革で金具の一部を巻き込んで「縫い留める」のが最も確実な方法です。
ボタンのようなものは、裏面に棒を付け、穴を開けた革に通し、裏にあてた受け金具に打ちつけて棒を変形させて噛み合わせます。これは「カシメ」「カシメ止め」といわれます。
台座に付ける場合、細い板を裏面に溶接(ロウ付けといわれます)して台座の穴に通し、板をを曲げて台座の裏面に貼り付けて留めます。これを「割足」といいます。
小さな飾りなどは、「接着」による方法しかない場合があります。金属やプラスチックと革を完全に接着するのは困難であるため、履いているうちに一部取れてしまうのは覚悟で、買い求められた方が良いと思います。